1.例会・事業名:3月公開例会「立て山鉾よ、どこへ行く」
2.日時:平成31年3月20日(水)
3.会場: 酒田産業会館4F
4.担当委員会名:救済!山鉾委員会
5.報告:
1993年、第27代理事長日向信之先輩は「山鉾の再現」と題した提言書の最終章「継続への可能性」の中で、「祭後の保管場所として山車会館の建設促進を提案します。」と記されました。
今日に至るまで、山鉾事業は様々な形で展開され「立て山鉾の復活」「400年祭での立て山鉾市内巡行」「2018年市内巡行復活」等、地域に多くのインパクトを与えてきましたが、26年前に既に打ち出されていた「保管場所」の問題を始め山鉾事業は多くの問題を抱えている現状があります。
このような現状を踏まえて、立て山鉾を含めた山鉾事業が抱えている問題を認識し、その解決の必要性を理解することを目的として本例会を開催致しました。
6.出席者数 (メンバー(新入会員候補者含む)報告のみ:
現役 39名
新入会員 4名
7.委員長コメント
本年で創始410年祭となる5月20日の山王例大祭(酒田まつり)は、湊町酒田の最大の催事の1つとなっています。中通商店街の入り口から日和山公園までの約1kmに及ぶ出店ロードは「お祭り感」を演出し、19日の宵祭りでは高さ22.36mの「立て山鉾」の巡行をはじめ、各種団体が趣向を凝らした催し物を披露し、20日の本祭りでは上・下日枝神社の渡御行列、神輿渡御、そして50を超える団体の山車巡行が行われます。
私は山王例大祭(酒田まつり)こそが、歴史や文化を軸としたアイデンティティの醸成、つまり「我々は酒田市民である」という誇りを育てる心の拠り処であると考えています。普段は、「地元なんて何にもないよな」と斜に構えていても、1年に1回のその日だけは、「酒田まつり」というだけで何故か気持ちが浮き足立ち、えも言えぬ昂揚感を胸に頂き、「我々は酒田市民である」という一体感を共有できる日であって欲しいと考えています。
その「一体感」の象徴として考えているのが、高さ22.36mの巨大な山車「立て山鉾」です。「山に神が宿るという山王信仰と、湊町酒田の商人気質が融合して生まれた文化」とでも言えるのではないでしょうか。つまり、山王信仰ゆえに山車は「山」をモチーフとして、見栄と意地を張りあう酒田商人が「山の高さ」を競い合うので、山車は自然と巨大化すると…。
当会議所では、今から26年前の1994年に「電線の普及とともに姿を消した立て山鉾を復活させたい」という構想を抱き、2008年に高さ20mを超える「立て山鉾」の復元に成功し、翌年2009年(山王例大祭創始400年祭)には青森県の五所川原の立佞武多の製作関係者に協力を仰ぎ、夜になる美しく点灯する、言わば現代版「立て山鉾」がまさに「百年の時を超えて」復活し、酒田の中心市街地を巡行しました。以降、立て山鉾は酒田まつりの象徴となるべく試行錯誤を繰り返し現在に至りますが、この立て山鉾は建設も維持管理も市民・地元企業の協賛金や実行委員会の力で成り立っています。まさに、立て山鉾という酒田まつりの象徴は「まちのみんな」の力で甦り、まつりの活気を産み出しているのです。
しかし、今、その「立て山鉾」は大きな問題に直面しています。もう少し正確に言えば、以前から問題認識はあったが、いよいよその問題を解決する必要に駆られたということになります。つまりは、立て山鉾の「保管場所の問題」です。これまでは、山形県港湾事務所のご理解と多大なるご協力のおかげで、高さ20mを超える立て山鉾のパーツは、酒田まつりの終わりと同時に分割解体され、山形県酒田海洋センターの倉庫に保管させてもらっていましたが、同施設の耐震補強を含めたリニューアル補修工事に伴い、来年の酒田まつりを最後に保管場所として使用することができなくなりました。
「海洋センターでの保管ありき」でこれまで立て山鉾の「事業」を展開してきたことに対して、痛烈に反省し、その事態に顔は絶望の色に染まりつつも、私の心の底に「どん」とおさまって決して揺らがないものがあります。それは「この危機を、まちのみんなと乗り越えた先に、本当の立て山鉾の復活があるのではないか?」という強烈な想いです。
かてつこのまちから、立て山鉾が消えた時に、先人達が何を想っていたかを正確に知る由はありませんが、立て山鉾という歴史に裏打ちされた「文化」は「まちのみんな」の力で百年の時を超えて、平成の世で復活を遂げたのです。その立て山鉾を新しい令和の世で再び葬りさるわけにはいかないと考えます。今こそ、行政・民間の垣根を越えて、市民一人ひとりの声を拾い集め、「立て山鉾を今後どうしていくか」を真剣に考える時がきたと考える絶好の機会なのではないでしょうか。
今年、酒田JCは立て山鉾の今後を占う有識者会議・市民会議の機会を創出して、立て山鉾の保管場所のみならず立て山鉾を活かしたまちづくりの方向性を明確に示していきたいと考えています。是非、多くの市民の皆様から、湊町酒田、酒田まつりの象徴である立て山鉾を救済するための活動に加わって頂きたいと思います。