理事長所信
公益社団法人酒田青年会議所 2015年度
理事長 菊池武彦
当会議所は1967年の創設以来、諸先輩方の努力、情熱の積み重ねと共に常にこの地域の発展のために尽くしてきました。これまでひとづくり、まちづくりの面で果たしてきた役割は極めて大きく、人口減少問題により都市機能の維持が困難となり地域社会の存続が危ぶまれる現在、明るい豊かな社会を築くという私たちの役割はより重要なものとなっています。将来のこととして懸念されてきた人口減少といった地域社会の危機はもはや未来の予想ではなく、現在進行中の避けることのできない現象となってしまいました。この事実を受け入れた上で、活力に満ちた地域社会を存続させ、明るい豊かな社会を実現するために、考え、行動していかなければなりません。人口減少や少子化、高齢化等社会構造の変化による多大な困難が予想される未来に対して覚悟を持って立ち向かうときが来ています。地域の方々の力を結集し、より明るいより豊かな未来へと変革していくために、私たちはリーダーシップを発揮していかなければなりません。
地域の誇りとなる酒田まつりを
酒田まつりは、立て山鉾という象徴を103年の時を経て再び得たことで、地域社会の酒田まつりに対する関心、意識は高まりました。近年、酒田まつりに関係する方々により山車の姿や装束に山王例大祭より続く酒田まつりの伝統を反映したものにしていこうとする動きが高まっています。これは酒田まつりが真の誇りとして地域の方々の意識そして行動を具体的に変える力を持っているからに他なりません。この酒田まつりがこの地域の変革の原動力となるように、未来に向けた酒田まつりの姿を明確に示していかなければなりません。
宵祭りは当会議所が企画、運営を担い、日和山での開催が昨年で3回目を数え、酒田まつりの恒例行事として認知されるようになってきました。この宵祭りを20日の本祭りと並ぶ酒田まつりの重要な行事としていくために、本年も地域の方々の参加を促しながらより盛大なものとし、存在感を高めていきます。また本祭りは、絶えることなく連綿と盛大に開催してきたすばらしい伝統をしっかりと未来へと継承していくために、これからを担う子供たちや若い世代と共に伝統に基づき山鉾を主体とした山車行列に進化させていきます。さらに、長期的なビジョンに基づいてこれからの酒田まつりを更に発展させていくために、2014年より始まった今後の酒田まつりの方向性を定める長期構想の策定作業を引き継ぎ、今後の状況に対応させながら更新し、当会議所の内外に周知を図っていきます。
地域社会の酒田まつりに対する関心を高めていく中で、その関心は地域全体に対するものへと代わり、地域の方々の意識、行動をより郷土愛に溢れたものへと変えていきます。
2014年立て山鉾のリニューアルにより、私たちはこの立て山鉾がこの地域に欠かすことのできない存在となっていることを改めて認識しました。地域の誇りである酒田まつり。そして酒田まつりの象徴となるもののひとつが立て山鉾でなければなりません。この立て山鉾の存在がこの地域の方々の酒田まつりに対する意識を変え、山鉾を主体としたより酒田まつりらしいまつりに変えるのです。この山鉾を今後の酒田まつりを考えていく中での礎としていかなければなりません。
当会議所はこれまで多くの山鉾、山車を製作してきました。それら全ての山鉾、山車はたとえ製作から幾年が経過していても、間違いなく地域の方々の誇りとなるものでなければなりません。いつの年も絢爛、勇壮な姿を現し続けなければならなのです。山鉾、山車に対する関心、ひいては酒田まつりに対する地域の方々の関心、期待をより高めていくために、本年は既存の山鉾、山車の改修、整備を進めていきます。また、永く山鉾、山車をこの地域のものとしていくために、山鉾、山車を強く想い携わることのできる人材の育成を行っていきます。
山車まつりとしての酒田まつりの魅力を高めていくことで、山鉾が大きな役割を担う酒田まつりの姿を地域の方々と共有し、真の誇りとするべく酒田まつりを変えていきます。
故郷を誇りと感じる青少年育成
感受性の豊かな若い時期の経験は、その人間の生涯に残る大きな影響を与える重要なものです。生涯に渡ってこの地域を想い、活躍する人材を育むために、現代の青少年たちに対して、積極的に関っていかなければなりません。この地域のことを誇りと感じることができる経験が必要なのです。
まずは、地域の子供たちに海洋少年団の団員たちと共に行動する学びの機会を作ることで、古くからの湊町である酒田の誇りとはどのようなものであるかを知ってもらいます。また、長年当会議所が取り組んできたわんぱく相撲は、多くの子供たちに一瞬の勝負に掛ける真剣な想いから生まれる他では得ることができないすばらしい経験を与えてきました。物事の動きを心で深く感じ取ることができる豊かな感性を持つ人間を育んでいくために、本年も参加者の増加に努めながら開催します。
私たちが子供たちに対し、この地域を本当に愛し真摯に行動する姿を見せながら、多感な青少年の時期に心を強く動かされるような経験を、自らの生まれ育った地域を強く想う経験を提供していくことで、強くこの地域を想い行動してくれる人材を育成していきます。
豊かさを実感できる地域とするために
私たちは「明るい豊かな社会」を実現することを目指している団体です。豊かさとはその地域において、どれだけの価値を創造し、蓄積できているかということであると考えます。さらなる豊かさを創造していくためには、この地域に未だに眠り、人々から適正に認識されていない事物を発掘し、多くの方々がその価値を認識できる状態にしなければなりません。
当会議所の活動エリアである遊佐町は豊かな自然環境に恵まれ、高速道路の整備等により今後その価値を大きく発揮していく機会が訪れています。また鳥海山と飛島の日本ジオパーク認定を目指す動きも本格化してきました。このような現状を踏まえ、自らの住み暮らす地域に焦点を当て、魅力を研究し発信していくことで、経済的な面からこの地域の豊かさを創造していきます。
また、当会議所の活動エリアの周りに視野を広げ、この庄内地域の豊かさを創造していくために、庄内で活動する他の青年会議所と連携し、交流も深めながら、共同事業を開催していきます。
より強い組織を
当会議所は近年広く日本中より会員拡大の先進地として注目される程の会員拡大を成し遂げました。会員数が増え組織力が強化されたことにより、より多くの事業をよりしっかりとした体制にて行えるようになりました。また、一方では単純に会員数を増大させるだけでなく、新入会員の指導、育成にこれまで以上に注力していくことが必要であるという課題も見えてきました。明るい豊かな社会を築き上げるために求められる長期的な会員拡大のあり方を考え、実践していかなければなりません。
まず、当会議所がこれまで以上に地域に貢献できる組織として成長していくために、本年度の拡大目標人数を40人とし、会員数が増加していくよう努め、会員拡大を当会議所全体で行っていきます。会員数が増大し組織力が向上することにより、より大きな地域の課題に立ち向かえるようになります。一方で、長期的なこの地域社会の豊かさ実現に向けて望まれる当会議所の会員拡大のあり方とはどのようなものであるかを探求し、入会人数という指標にのみとらわれることなく、入会後の会員の育成方法を含めて検討し、実践していきます。
会員数の増加、そしてその成長を確実に組織力増大に結びつけ、より一層この地域に貢献できる組織としていきます。
思考力を持つリーダーの育成
「ひとづくり」は青年会議所の大切な役割であると考えます。現役メンバーとしてどのように活躍するかだけでなく、40歳を過ぎ卒業した後も様々な場面でこの地域のリーダーとして活躍できる人材を育成していくことが重要と考えます。
リーダーに求められる資質は多々ありますが、その中でも自ら考え、自ら判断する能力が特に重要であると考えます。自らの判断が自身のみでなく、周囲に大きな影響を及ぼすのがリーダーの立場だからです。論理的思考力を基礎とするメンバーの判断力育成に注力していきます。また、リーダーに求められる資質として重要と考えるもう一つのものとして、多様な価値観を受け入れる能力があります。私たちはリーダーの中のリーダーたらんとする存在であると考えます。そのためには能動的に考え行動する多くの存在をまとめていく能力が必要です。その能力とは、多様な存在、立場を尊重しうるものです。世界には実に様々な考え方、習慣が存在します。2015年度JCI世界会議金沢大会を機会とし、様々な方々との交流を通して、世界にも通用するような多様性を尊重できる人材の育成を図ります。
生涯にわたりこの地域を牽引していくリーダーを育成することが、この地域社会の安定した発展につながっていきます。
創立50周年にむけて
私たち青年会議所がこの地域社会により多くの成果を発揮していくためには、地域社会からのより多くの理解、評価を得ていく必要があります。地域より評価、理解に値する運動を行うことに加えて、それを広く社会に発信していかなければなりません。また、次年度2016年に創立50周年を控え、これまでの当会議所の長い歴史をまとめることが、50周年以降の当会議所の方向性を定めるために必要と考えます。
地域社会からの当会議所への理解、評価をより確かなものとするために、広報の配布を主体とした、より積極的な外部への情報発信を行っていきます。合わせて、創立50周年以降の当会議所が進む道を考える示唆を得るために、これまでの当会議所の歩みを調べ、まとめて内部に発信していきます。
自らのこれまでの歩みと現在の状況を、外部に積極的に発信していくことで、当会議所に対する理解、評価が深まり、今後当会議所がこの地域にこれまで以上に貢献していくためのしっかりとした土台とします。
いかなる時も頼りとされる存在であるために
この酒田はかつて酒田大火という大きな災害が起きたまちです。そして2011年には東日本大震災を経験しました。私たちはいつでも、どのような場合でも自分の地域を確実に護ることのできる存在であり続けなければならないと考えます。そのためにはどのような状況にも揺らぐことのない、強く発揮される力を支える強い骨格が必要なのです。法人である私たちにおけるその骨格とは、定款をはじめとする法規、規則であると考えます。諸規則に厳格に基づいた組織運営により、この地域をいかなるときも護り続けることができる組織であり続けます。
また、私たちは2014年に地元の酒田市社会福祉協議会、遊佐町社会福祉協議会と、そして公益社団法人名古屋青年会議所と公益社団法人二本松青年会議所と災害協力協定を締結しました。新たなパートナーの皆さんとの間の絆を日々深め、この協定を履行するための体制整備を進めていくことで、いついかなる時もこの地域を護ることができる、頼りとされる存在となります。
結びに
人間とは私を含め、強くもあり弱くもある存在だと思います。自らの成長、進化を望んだとしても、自身の力だけで自らを変えていくことは簡単ではありません。その変えていく強い力を持っているものが「誇り」であると私は考えます。「誇り」とする存在が、私たちの意識を、そして行動を変える力をもたらすのです。だからこそ「誇り」は尊い存在であると私は考えます。
「誇り」と共に未来を創って行きます。「誇り」に満ちた未来を。